リニューアボー 自然エネルギー政策研究所 Institute for Renewable Energy Policies

ドイツ連邦議会「環境・自然保護・原子力安全委員会」の公聴会で報告

環境・自然保護・原子力安全委員会で報告

3月19日(水)は、菅顧問がドイツ連邦議会に招聘されて「環境・自然保護・原子力安全委員会」の「チェルノブイリ/福島」をテーマとする公開ヒアリング(公聴会)に出席しました。もう一人の報告者は、チェルノブイリ原発事故の専門家で元グリーンクロス・ロシアのウラジミール・クズネツォフさんです。会場は議事堂内のマリエ・エリザベート・リューダースハウス 3.101 会議室。報告は各自30分の持ち時間で、その後に質疑応答。最後にヘーン委員長による全体総括のコメントで締めました。この公聴会には、「キリスト教民主同盟(CDU)」や「社会民主党(SDP)」、左翼党、緑の党などすべての政党から多数の議員をはじめ環境・自然保護・原子力安全省の事務次官や官僚なども参加。2Fの傍聴席には緑の党や環境NGOのメンバー、若い学生たちなどが多く参加し、菅顧問の報告後の質疑応答では20件近くの熱心な質問や感想が寄せられました。

菅元首相 クズネツフォ氏

元グリーンクロスのクズネツフォ氏

【報告1: チェルノブイリ原発事故の被害とその後】最初に「チェルノブイリ原発事故」について、元グリーンクロス・ロシアの核と放射能に関する安全プログラムディレクターでアルハンゲリスク州立大学教授のクズネツォフ氏から報告がありました。クズネツォフ氏は、チェルノブイリ原発の3号炉でチーフエンジニアとして勤務し、チェルノブイリ原発事故後には事故後の精算人として、またソビエト原子力エネルギーアカデミーのメンバーとして働きました。

菅元首相 環境委員会

環境・自然保護・原子力安全委員会

【ロシアの原発事情】クズネツォフ氏は、ロシアでは原発における放射線管理や核廃棄物の保管など安全面で最新の基準に合わない問題があることや、現在でも原発の脆弱性が続いていることを報告しました。具体的には、チェルノブイリ事故の前の1977年に廃炉が決まっていた原発が資金不足で廃炉処理が進まず、今も燃料が取り出せず危険な状態にあること。現在、11基も(旧ソ連時代に事故を起こしたものと同じ)古い型の原発が稼働していること。また、原発事故で放射能に汚染されている森林で山火事が起きて、その放射性物質が大気中に飛散して新たな汚染が生じていることなどを報告しました。そして、ドイツの専門家からロシア政府に対して再度の原発事故が起きて「チェルノブイリの二の舞」にならないよう古い原発を廃炉にするようプレッシャーをかけて欲しいと語りました。

菅元首相 環境委員会

福島原発事故について報告する菅顧問

【報告2:福島原発事故と再生可能エネルギーの可能性について福島原発事故とその後の状況について、危機対応に当たった当時の首相として菅顧問が報告しました。菅顧問は、東京電力福島第一原発では3つの原子炉で次々と水素爆発があったが、それでもあの規模の被害で収まったのは自衛隊・消防・警察や原子炉で作業にあたった東電や下請会社の職員など関係者の決死の努力があったからだと報告。それに加えて、4号炉の核燃料プールが「幸運な偶然」によって冷却水で満たされて、メルトダウン(再臨界)が起きずに済んだから「首都圏を含む250キロ圏内の5000万人が避難」する大惨事にならずに済んだことを伝えました。それでも、まだ14万人が避難生活を強いられていること。広域の除染や被災者への賠償、廃炉や使用済み核燃料の最終処分問題などを考えたら、原発が決して安いエネルギーではないこと。その後に再生可能エネルギーの「固定買い取り制度(FIT)」が成立したことによって、太陽光発電などが急速に拡大していることなどを報告しました。

 

驚愕の事実にショックを受けるSPD議員

【「原子力ムラ」への質問も】公聴会の参加者の福島原発事故に対する関心は高く、質疑応答で20人もの各党議員から多くの質問が出されました。特に4号炉の燃料プールでメルトダウンが起きた場合、250キロ圏内の5000万人が避難する大惨事になっていた可能性があったことに対しては、SPDのニッセン議員から「驚愕の事実にショックを受けた。そんなに恐ろしいことになる可能性があったなんて知らなかった」やはり原発は絶対に廃止にするべきだという感想が語られました。

司会を務めるヘーン委員長

他の女性議員からは被災地の子供たちを含む被災者の放射線被ばくによる健康被害の実情。農地や海洋の放射能汚染と食料の安全性、廃炉作業に取り組む原発作業員の安全管理の問題について。また原子力ムラの影響力、現在原発が全て止まっていても電力が供給できている理由、再生可能エネルギー推進の主体について。政党の枠を超えた脱原発グループはあるのかなどの幅広い質問が次々と出されました。

菅元首相 ジルビアさん

質問する緑の党連邦議員たち

【報告の成果】この公聴会への参加をオーガナイズしてくれたジルビアさんによると、(ドイツでは福島原発事故を受けて、政治的には2022年末までにすべての原発の稼働を全廃することが決まっているが)「今日の午前中の環境委員会で、福島原発事故の後では初めてCDUの議員から公式に「経済的なことを考えたら原発の稼働期間をもっと延長するべきだ」という発言があった」「そのタイミングで、再稼働を狙っている保守系の議員たちに菅さんの話しを聞いてもらうことができたことの意味は大きい」とのことでした。

すべての政党から議員が参加した

与党のメルケル首相は、2011年の(福島原発事故の直後の地方選挙で)ドイツ緑の党が躍進(BW州で初のクレッチュマン州首相が誕生)したことを受けて、政治的な危機感から脱原発に舵を切りました。そのドイツでさえ、改めて「原発の2022年末以降の再稼働」の圧力が高まっていることに驚きました。同時に、まだ日本人にも十分に知られていない、原発事故が起きた場合の巨大なリスクを知ってもらうために「福島原発事故の知られざる事実」を国内外に広く伝えて行くことの重要性を改めて感じました。

ドイツ連邦議会議事堂

ドイツ連邦議会「環境・自然保護・原子力安全委員会」の公式HPに、ビデオ中継された公開ヒアリングにおける菅顧問の報告映像がアーカイブされています(※59分35秒に、司会で環境委員長のヘーン議員が公聴会の趣旨や報告者を開始。1時間2分20秒頃から菅顧問の報告がスタートします(ドイツ語の同時通訳音声あり))。

Vulnerabilities in nuclear power plants(原子力発電所の脆弱性)

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