リニューアボー 自然エネルギー政策研究所 Institute for Renewable Energy Policies

海外情報の記事

ヘルシンギン・エネルギア(ヴォサーリ発電所:熱電併給施設)を視察

ヴォサーリ発電所(熱電併給施設)

欧州視察の最終日、3月25日はヘルシンキの東部に位置するヘルシンギン・エネルギア社が運営する熱電併給施設「ヴォサーリ発電所」を視察しました。ヘルシンギン・エネルギア社は、1909年に設立されたフィンランドで最大級のエネルギー会社です。同社はヘルシンキ市が所有していて、発電と売電、地域暖房と地域冷房を供給しています。同社の概要と施設の紹介をしてくれたのは、同社の広報担当ハーゲン・マックラー氏と技術部長イスモ・スーマン氏でした。

 

会社概要や発電所の説明

同社は、電力をヘルシンキの9割を占める40万世帯と300の自治体に提供。発電のための燃料の割合は、天然ガスが約50%。化石燃料が21%(熱の場合は石炭が45%)。原発が20%(オルキルオト原発の株式10%を所有)で再生可能エネルギーは10%(主に水力)だといいます。フィンランド最大のエネルギー事業者でヘルシンキ市が所有している同社の開発プロジェクトでは、2024年までに再生可能エネルギーの割合を現在の2倍以上に引き上げる計画だそうです。

発電所の内部を視察

この発電所では、コジェネレーション(電気と熱を同時に発生させる熱電併給システム)による地域暖房に加え「地域冷房」も実施しています。地域暖房については、配熱のための断熱パイプを地下に通して、10カ所の地域暖房センターを持ち100万世帯をカバーしています。今後は、地域暖房における自然エネルギーの割合を増やすために、現在使用している化石燃料を順次バイオマス資源に置き換えていく予定だそうです。

ヘルシンギン・エネルギア

現在は(バイオマス)ペレットを5%ぐらい石炭に混ぜて燃焼試験中ですが、近い将来には40~50%にあげていくことを予定しているそうです。そのための新しい発電所の建設も検討しています。2000年に始めた地域冷房は、この5年間で急成長していますがサービスを提供しているのはまだ市の中心部のみです。海外の他の都市ではフランスのパリなどで広がっているといいます。地球温暖化が進む状況下では、今後はヨーロッパをはじめ各地でニーズが増えるかもしれません。

ヘルシンギン・エネルギアの担当者と

このフィンランドの「ヴォサーリ原発」の視察で、全日程10日間の欧州視察ツアーが終了しました。ドイツでは連邦議会の環境・自然保護・原子力安全委員会での公聴会で「福島原発事故の被害が更に拡大する可能性があった」ことについて、「(2023年末以降の)原発の運転期間延長」に向けた動きが始まっているドイツの国会議員の皆さんに伝えることができました。ポーランドでは、国会の「エネルギー資源特別委員会」で超党派議員の皆さんに「固定価格買い取り制度(FIT)」の実効性についてアピールすることができました。最後のフィンラドでは、あの小泉元総理が「原発ゼロ」に転換するきっかけになった使用済み核燃料の最終処分場「オンカロ」も視察できました。この成果を、国内での脱原発および自然エネルギー政策の実現に向けて活かしていきたいと思います。(全日程10日間の欧州視察ツアー映像報告

フィンランド「オンカロ(高レベル放射性廃棄物最終処分場)」などを視察

使用済み核燃料の最終処分場「オンカロ」

3月24日は、早朝にヘルシンキを出発してオルキルオト島にあるオルキルオト原発」と「オンカロ(高レベル放射性廃棄物最終処分場)」の視察に向かいました。このふたつの施設は、フィンランド南西部のバルト海に面したエウラヨキ自治体オルキルオト島に建設されています。約4時間をかけて到着した「ビジターセンター」では、TVO社の広報担当ユハ・ポイコラ氏、Posiva社の広報部長ティモ・セッパラ氏が案内してくれました。ちなみに、Posiva社のセッパラ氏は、オンカロを紹介した世界的に有名な映画『100,000年後の安全』にも出演しています。

第3世代安全基準の「オルキルオト原発」

オルキルオト原発は2基が稼働し、3号機が建設中です。3号機はフランスのアレバ社とドイツのシーメンスによる第3世代の安全措置があり、福島原発事故の後に引き上げられた世界最高レベルの安全基準を持つ原発です。格納容器は飛行機の衝突にも耐えられるように2重になっていて、メルトダウンが起きてもメルトスルーおよび再臨界しないように「コア・キャッチャー」が設置されています。そのため建設は、予定期間の2倍かかっても完成しておらず建設費も予定の3倍近くになるといいます。

地下420mのトンネルに核廃棄物を埋設

フィンランドは原発依存率が高く、最終的には現在の約2倍の60%まで原発を増やす計画だそうです。原発から出る高レベル廃棄物(使用済み燃料)は、40年間は原発サイト内の燃料プールで中間貯蔵。その後に地下420mの最終処分場「オンカロ」に移して地層処分します。稼働機関は2020年から100年間。その後は「トンネルごとすべてを埋め戻して」閉鎖します。そして、国の管理に完全移行する予定だといいます。オンカロの完成時の想定仕様は以下の通りです。収容可能容量:9000トン(4500キャニスター)、トンネルの深さ:400-450 m 、トンネル総距離:60-70 km、トンネル合計数:200、トンネル総容積:2 百万?、※地上とのつながり: アクセストンネルと立坑、換気シャフト

 

キャニスターを埋設するためのトンネル

【オンカロ視察報告】移動用の緩やかな坂道のトンネルを地下420mまで約5km降りると「実証用トンネル」サイトに到着します。そこでは、使用済み燃料を埋設するためのトンネルが横に枝分かれしています。トンネルには一定の間隔で井戸のような縦穴が設けられています。その縦穴にキャニスターと呼ばれる容器をベントナイト粘土で上下を密封する形で埋め込むそうです(処分孔縦置き方式)。このキャニスターは、使用済み燃料棒を12束収納する鋼鉄製の筒状の容器と、それを覆う腐食を防ぐための銅製容器の二重構造になっていて、これを多重バリアシステムと呼びます。

 

Posiva社セッパラ氏らから説明を受ける

【原発運営と最終処分を請け負う企業】フィンランドには2カ所に原発があります。ひとつはロヴィーサ原発。「フォルツム・パワー・アンド・ヒート社」が運営しています。FPH 社は北欧の大手エネルギー企業フォルツム社の子会社です。上場企業ですが過半数の株式をフィンランド政府が保有しています。もうひとつがオルキルオト原発です。「テオリスーデン・ヴォイマ(TVO)社」が運営しています。TVO社の株式の26%はフォルツム社、30%は地元自治体が運営するエネルギー会社が所有しています。

多重バリアシステムのキャニスター

1995年に原発事業者であるフォルツム社とTVO社が、高レベル放射性廃棄物最終処分場(オンカロ)の調査・建設・操業・閉鎖を実施するために設立した民間企業がポシヴァ(Posiva)社です。【最終処分場「オンカロ(洞窟/隠し場所)」決定の経緯】フィンランドでは、1994年に原子力エネルギー法が改定され、1996年からは放射性廃棄物の輸出・輸入が禁止されました(それまではロシアに返還)。TVO社は、高レベル放射性廃棄物のための最終処分場の検討を1980年の原発建設の際に始めました。

ベントナイト粘土で密封(Posiva社)

「気象と環境と人間」の影響から避けられる約18億年前にできた安定した岩盤に400mの深さの処分場を構想。岩盤の特性を調査するために50本以上のボーリング調査から5か所を選定、オルキルオトが選ばれた。2000年にエウラキヨ議会が受け入れを決定(財政的な優遇措置は、固定資産税の優遇措置のみ)。2001年に国会が承認して、最終処分地「オンカロ」建設を決定しました。

 

キャニスター用の竪穴をのぞく

【高レベル放射性廃棄物の処分(および廃炉)費用】フィンランドでは原子力法で放射性廃棄物管理の責任体制を規定していて、(エネルギー政策の)権限は雇用経済相が持っています。規制は放射線・原子力安全センター(STUK)が担当。高レベル放射性廃棄物の処分(および廃炉)費用は、雇用経済省が所管する「国家放射性廃棄物管理基金(VYR)」に積み立てられています。

キャニスター用の竪穴

この基金に積み立てを行う主な廃棄物発生事業者はFPH 社とTVO 社です。処分費用の見積額は、オンカロの建設や操業、閉鎖の実施主体ポシヴァ社が算定します。2010 年時点での処分費用の総額は、約33.2 億ユーロ(約4,420 億円)。発電所の稼働年数等を基に5,500トンの処分量を前提とした金額です。内訳は、オンカロの建設費などの投資費用が約7億ユーロ(約930億円)、操業費が約24.2 億ユーロ(約3,210 億円)、閉鎖・廃炉費用が約2億ユーロ(約270億円)です。(※1?=133円)『諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について』(2014年版)

岩盤の地層にも古い活断層の後が

【解説】高レベル放射性廃棄物の猛烈に強い放射性が、自然界にあるウラン鉱石と同程度の放射能レベルになるまでに10万年かかると言われています。利潤を求める民間企業であるポシヴァ社としては、オンカロの管理業務をどのように考えているのでしょうか?経営的にはペイしないのではないか?という疑問を持ちました。その質問をセッパラ氏にぶつけてみました。ポシヴァ社広報部長の返答は以下の通りです。操業を始める2020年から100年後には、廃棄物で満たされた処分場をすべて埋めて閉鎖します。高レベル放射性廃棄物が「永久処分」されたことをSTUK が確認した後は、廃棄物の所有権(管理義務)は国に移り、廃棄物に関する全ての責任を国が負うことが原子力法で規定されています。

地下420mは電気がなければ暗闇の世界

つまり、100年後までの処分用の費用も電気料金から積み立ててあるから経営的にも成り立つ(それ以降に経費が発生した場合は国が負担する)ということなのです。独立した企業(経営体)だと言っていたのに、この返事には驚きました。しかし「オンカロ」も絶対に安全だとは言えません。一カ所に数千トンという膨大な量の高レベル廃棄物(プルトニウムやウラン)がかなりの高密度で集積するリスクは計り知れないからです。

10万年後には放射線量が下がって…

懸念されている「人間(による危険)要素」として、10万年も経つ前にそれらを掘り出して原発の燃料や核爆弾の原材料として使おうとするリスクがないとはいえません。それにしても、地震大国の日本にはフィンランドのように18億年も安定した岩盤の地層は存在しません。果たして、使用済み核廃棄物の最終処分場のない(全国の原発サイトでも核廃棄物の置き場の余裕がない)日本で、原発を再稼働することが許されるのでしょうか?
※参考資料:『諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について
経済産業省 資源エネルギー庁 発行

 

 

「ジャルノヴィエツ原発」建設予定地での脱原発デモと記者会見

廃墟となったジャルノヴィエツ原発

3月22日の夕方には、ヴェイヘロヴォにある「ジャルノヴィエツ原発」の建設予定地を視察しました。ジャルノヴィエツは、夏には観光客が訪れるリゾート地でもあります。ポーランドでは、1970年代に原子炉と核燃料以外を国産化する計画を立てました。ポーランドの原発や核廃棄物貯蔵施設などは、環境省の監督下にある原子力庁が管理しています。1982年にはジャルノヴィエツ湖のほとりで原発の建設が始まりましたが、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の影響などで政府は計画を断念し、1991年に建設が中止になりました。6割近く完成していた建物は、現在は廃墟となっています(写真はWikipediaより)。

ジャルノヴィエツ原発の建設反対デモ

しかし、ポーランド政府はエネルギー源の多様化と温室効果ガス排出量削減という理由で、原発の導入を再検討します。2009年には、ロシアへのエネルギー依存度を下げることなどを名目に、2020年までに原子力発電所を建設することを決定。最終候補地がジャルノヴィエツなど3つの町に絞られました。他の候補地、ゴンスキとホチェヴォの市民は原発建設に反対したそうです。そして、2011年の福島原発事故を受けてジャルノヴィエツでも反対運動が盛り上がっています。その原発建設予定地を、今回のポーランド訪問を企画してくれたMuSES財団理事長アンジェイ・スワヴィンスキ氏らと視察しました。

菅元首相がデモに参加

橘と菅顧問が脱原発デモに合流

その視察中に建設反対派のデモがやってきたので、代表理事の橘と菅顧問が合流しました。菅顧問は、福島原発事故から3年が経っているにも関わらず、水素爆発を起こした原発建屋内の圧力容器からメルトスルーした高レベル放射性廃棄物(デブリ)を取り出すめども立っていないこと。福島では、まだ14万人もの避難者が故郷に帰れていないこと。総理在任中には海外に原発の輸出を推進したが、こんな過酷な被害をもたらす原発に頼ってはいけないと180度考えを変えたことなどを伝えました。橘は、菅顧問が総理大臣の際に再生可能エネルギーの固定買い取り制度を導入したこと。その効果で、太陽光発電などの自然エネルギー事業が飛躍的に発展していることなどを報告しました。

日本の再生可能エネルギー事情を語る橘

デモでは、長年地元で脱原発運動を続けている活動家のトーマス・ボレヴィック氏や、観光地ミエルノ町のオルガ・ローザク・ペザラ町長らが原発建設に反対するスピーチを行いました。デモの参加者には、グリーンピース・ポーランドやヨーロッパ緑の党の関係者もいました。この後、橘と菅顧問は取材に来ていたメディアのインタビューに応じました。前の記事でご紹介したヴェルヘロイヴォ市長訪問から、この記者会見までの流れを地元のTMMテレビが特集してくれています。
Antyatomowa visit the Japanese prime minister

ヴェイヘロヴォ市の産業商工会議所主催の講演会に参加

菅元首相とヴェイヘロヴォ市長

菅顧問とヴェイヘロヴォ市長

3月22日は、早朝にワルシャワからポーランド最大の港湾都市で、ポモージェ県の県都グダニスクに移動しました。その北西に位置するヴェイヘロヴォ市の市庁舎に、橘と菅顧問がクリストファー・ヒルデブラント市長を表敬訪問しました。ヴェイヘロヴォ市庁舎の周囲には、カルチュラルセンターや市立公園、文学・音楽博物館と聖アンナ修道院教会などがあります。

ヴェイヘロヴォ市議会議員の皆さんと懇談

市の中心に位置する市長舎内では、たくさんの部屋に展示された様々な歴史的な絵画や民族衣装などを見ながら、ヒルデブラント市長からヴェイヘロヴォ市の歴史や概況などについて話を聞きました。その後に、地元の素材で作られたハーブティーや紅茶、フルーツやスイーツをいただきながら、市議会議員の皆さんとも懇談しました。

菅元首相@ヴェイヘロヴォ商工会議所

講演会に参加する菅顧問と橘

その後に、ポーランドのヴェイヘロヴォ市産業商工会議所が開催した講演会に橘と菅顧問が参加しました。テーマは、日本における福島原発事故と再生可能エネルギーに関して。菅顧問の講演の後に質疑応答に応じました。会場は、ヴェイヘロヴォ・フィルハーモニックホールです。「ジャルノヴィエツ原発」の建設予定地があるヴェイヘロヴォで開催された講演会には、地元の市民をはじめ地方議員や首長、行政関係者、再生可能エネルギー事業に関心の高いビジネスマンや脱原発運動団体のメンバーなどが多数参加しました。

地方議員やビジネスマン、環境NGOからも

菅顧問は、福島原発事故の経験と日本の再生可能エネルギーの状況について報告しました。参加者からは、原発建設と再生可能エネルギーについて非常に関心が強く、多くの質問が寄せられました。地元の住民からは再生可能エネルギーへの補助金や固定買い取り制度(FIT)に関しての質問が集中。テーマによっては数人が同時に発言して騒然とした雰囲気になる場面もありました。

どうしたら原発建設から地域を守れる?

具体的には、「再生可能エネルギー振興(FIT)のための国民の負担」が税金としてなのか電気料金からなのかを詳しく確認する質問が続きました。原発の建設予定地の住民からは、原発の建設にかかる期間とそれに伴う「地元の負担と利益」について建設後を含めて切実な質問がありました。観光地でもある原発の建設予定地の村長からは「菅元首相が我が国の首相だったら観光地に原発を建設するか?」という質問も。

 

フィルハーモニックホール

菅顧問が、日本では地場産業の少ない、経済的に厳しい地域に原発が建設されることが多いことを伝えて、「観光資源のある地域では、それを活かした方がいいのでは?」と答えると大きな拍手が起きていました。原発建設を阻止しようと活動している住民からは、自分たちは少数派だがどうやったら地域を守れるか?という必死の訴えもありました。参加者たちの意見としては、再生可能エネルギーで自主的な電力が確保できるのならば、原発がなくてもいいのではないかという声が多い印象でした。

ポーランド下院議会「エネルギー資源に関する特別委員会」などで講演

菅元首相@ワルシャワ

再生可能エネルギーの関係者と懇談

3月21日は早朝にポーランドのワルシャワへ移動。シェラトンホテルにて、橘と菅顧問が環境・再生可能エネルギー関係者との意見交換会を行いました。参加者は以下の通りです。再生可能エネルギー研究所所長のグジェゴジ・ヴィスニウスキ博士。ワルシャワ工科大学教授・熱工学研究所副所長のドロシー・シュヴィドゥック博士。ポーランド緑の党代表のアニエスカ・グルジベックさん。MuSES財団理事長のアンジェイ・スワヴィンスキ氏(今回の訪問のコーディネーター)など。菅顧問からは福島原発事故の際の首相として経験した原発事故の過酷さについて。また総理退陣の条件として導入した再生可能エネルギー法の影響などについて報告しました。専門分野を持つ参加者からは関連の質問が多数出されました。

 

菅もと首相と下院議長

エネルギー資源に関する特別委員会で講演

【エネルギー資源に関する特別委員会】午後からは、ポーランド国会で開催された下院議会「エネルギーとエネルギー資源に関する特別委員会」に参加。所属する超党派の国会議員団に対して菅顧問が講演しました。場所は下院議会C棟102会議室で、参加者は以下の通りです。ヴァンダ・ノヴィツカ下院副議長(女性・人権活動家、パリコト党を離党して無所属)、アンジェイ・ザヴィンスキー下院議員:(エネルギー資源に関する特別委員会委員長)、市民プラットフォーム議員団長)、アンナ・グロツカ下院議員(みんなの運動所属:欧州で初めての性転換者の国会議員)、ヴァルデマル・パブラク下院議員(元首相、元経済大臣)など。他にもエネルギー委員会の理事メンバーを含めて、意思決定の権限を持っている超党派の国会議員メンバーが参加しました。

菅元首相@エネルギー特別委員会

超党派の国会議員が参加

ポーランドは、2010年に日本と原子力協定を結び、安倍首相が原発輸出のトップセールスを行った国のひとつです。現政権は、エネルギー安全保障の観点からも原発の建設を予定しています。ただポーランド議会では、再生可能エネルギーの方向性も模索されていて各党とも色々な意見があります。菅顧問は、総理大臣として陣頭指揮を執った福島原発事故について、1号機から3号機までがメルトスルーから水素爆発に至った経過や、最悪の場合には東京を含む250km圏内の5千万人が避難する可能性もあったことなどを報告。自衛隊や警察、消防など行政機関関係者による決死の努力に加えて、いくつもの「幸運な偶然」が重なったこともあり(4号機の燃料棒プールでの再臨界が)避けられたことを報告しました。


エネルギー特別委員会を傍聴する橘ら

そして、福島ではまだ14万人が避難生活を強いられていること。広域の除染や被災者への賠償、廃炉や使用済み核燃料の最終処分問題などを考えたら、原発が決して安いエネルギーではないこと。そして原発はアメリカでも減ってきていること。日本でも再生可能エネルギーが「固定価格買い取り制度(FIT)」の導入によって急速に発展していること。条件が揃えば、ドイツのように2050年には80%を目指せる可能性があることを報告しました。参加者からは、原発の賛成派も反対派からも熱心な質問がありました。特にFITに関しては、具体的な買い取り価格に関する値段設定やコストなどについての質問が出ました。委員会での報告に続いて、ノヴァッカ下院副議長、ザヴィンスキー委員長、スワヴィンスキ理事らと国会内で記者会見を行いました。

 

菅元首相がポーランド国会で講演

東日本の地図を示して話す菅顧問

【一般市民との公開意見交換会】この後、 橘と菅顧問はポーランド国会議員団と一般市民との公開意見交換会に参加しました。テーマは「ポーランドと日本による再生可能エネルギーに関する協力関係などについて」。参加者は、引き続き参加のザヴィンスキー委員長、パブラク下院議員(元首相)の他に、ピーター・シエスリンスキ下院議員(新技術と革新に関する委員会メンバー)および超党派の国家議員団、元欧州議会議員、環境NGO、脱原発団体の関係者、在ポーランド日本人などでした。最初に、菅顧問が福島原発事故のその後と日本の再生可能エネルギーについて報告しました。

 

経済大臣も務めたパブラク元首相

経済大臣も務めた経験のあるパブラク元首相は、市場で再生可能エネルギーの売買ができるという革命的な変化を起こすための「固定価格買い取り制度」導入のタイミングなどに関して熱心に発言と質問をしました。具体的には、一定の価格が保証されて蓄電技術が発展すれば一般家庭も買電をする電力事業者になり、大手電力会社の競争相手になる可能性があると発言。太陽光発電設備が10年で減価償却できるなら「再生可能エネルギーのコストが高い」という固定概念を打破できるのではないかと質問しました。また、前ポーランド緑の党共同代表のダリウス・ゼッド氏が、ポーランドのエネルギー政策を考える場合には(再生エネ推進の)EUの共通エネルギー政策を念頭に置く必要があることを指摘しました。

固定買い取り制度(FIT)に関する質問も

市民からも、両国で脱原発や再生可能エネルギーの分野で協力していく可能性についてなど多くの質問が出されました。菅顧問は、原発の輸出を進めていた立場から脱原発に変わった理由を聞かれて、廃炉や高レベル放射性廃棄物の処分コストが膨大であることや、被災者が家族が3年が経ったいまでも引き裂かれて生活せざるを得ない状況であること。そしてm福島原発事故では「250km圏内の5千万人が避難する」という最悪の事態が十分にあり得たことなどについて、地図を掲げて説明しました。

菅元首相の講演@ワルシャワ

ワルシャワ経済大学で講演する菅顧問

【ワルシャワ経済大学での講演】この日の最後に、ワルシャワ経済大学3号館第1講堂で菅顧問が、発生当時の総理大臣として陣頭指揮を執った福島原発事故とその後の経過について講演しました。講演会には、大学生以外にも会社帰りのサラリーマンや女性たちも来場しました。学生たちからは、一度事故が起きれば民主主義制度そのものを破壊するぐらい甚大な被害をもたらす原発をなぜ作ったのか?という根源的な質問が出されました。

 

学生たちから多くの質問が出される

他にも、原発事故による被災者の被害を含めた社会的・経済的なコストについて。また日本における太陽光発電や蓄電などの技術や再生可能エネルギーで2050年代までに80%を達成する可能性や、固定価格買い取り制度(FIT)のこと。他にも日本とポーランドとの技術協力に関する質問などが出ていました。講演後には、菅顧問のいるステージに参加者が列を作って、時間切れで言えなかった意見などを伝えていました。

 

 

BW州太陽エネルギー・水素研究センターとオブリッヒハイム原発の視察

意見交換をする橘と菅顧問

3月20日の午前中には、代表理事の橘と菅顧問が「太陽エネルギー・水素研究センター(ZSW)」を視察しました。最初に最新の研究などの全体像を専務理事のフリッチョフ・スタイス博士がしてくれました。スタイス博士によると、ZSWは公的機関と民間企業からの委託を(半々で)受けて素材研究や技術移転のための研究を行っています。ZSWの最新の技術開発の成果としては、太陽光発電では世界最高(20.8%)の発電効率を達成したといいます。

 

メタン(CH4)生成装置

また、新技術の太陽発電をテストフィールド(ドイツ・スペイン)で実地試験もしているそうです。現在は太陽エネルギーの調達コストを下げるための研究を、産官学の共同プロジェクトで4000万?の助成を受けて行ったり「リチウムイオン電池」の研究などを行っています。ドイツでは、すでに8万MWが再生可能エネルギーで生産されていて、天気のいい日にはなんと総需要の70%をカバーできるそうです。このベースが拡大すると余剰電力が発生する可能性があるので、それを水素電池などの形で貯蔵できる仕組みを検証しているとのことです。

 

BW州の公用車には水素電池車も

また再生可能エネルギーは、天候などで発電量が変動するため、発電した電気をどう貯蔵するかが重要になってきます。ドイツには、自治体によるガス供給の全国ネットワークがあります。でも、まだ水素供給のインフラがないため「水素をメタン化(CH4)」して、天然ガスのパイプラインや地下のタンクなどで貯蔵する構想「パワー・トゥー・ガス戦略」プロジェクトを検証中です。すでに、メタンガスで走るアウディの車1500台を使った実証実験(市場化のための技術移転)を始めているとのこと。連邦政府レベルでは、4人の専門家による独立委員を設置して検証・分析にあたっています。ちなみに、BW州環境省の自動車は、水素電池車を採用しているそうです。

EmBW株式会社のオブリッヒハイム原発

【オブリヒッヒハイム原発】午後には移動して、2005年に廃炉作業を開始して現在も廃炉作業中のオブリヒッヒハイム原発を視察しました。EnBW(エネルギー・バーデン・ヴュルテンブルグ)株式会社が管理しているオブリッヒハイム原発の廃炉工程などについて、EnBW原子力有限会社代表取締役のヨルグ・ミシェル氏が説明してくれました。EnBW株式会社はヨーロッパ最大級のエネルギー供給会社です。業務内容は電力、ガス、再生可能エネルギーなどの発送電、輸送、供給。そして原発の建設・運営から廃炉までを行います。従業員は2万人。昨年の売上は約200億ユーロ(2兆8千億円)です。

EnBW原子力有限会社代表取締役ミッシェル氏ら

その子会社の「Enkk(原子力有限会社)」は、フィリップスブルグ原発/ネッカーヴェストハイム原発/オブリッヒハイム原発と3つの原発の運転・停止・廃炉を行っており、従業員は約2000人です。オブリッヒハイム原発は、2005年から廃炉作業中。運転を停止した原発から、使用済み燃料を取り出して中間貯蔵施設に移動して40年保管します(2002年の原子力法改正で燃料の再利用は禁止に)。高度に放射性を帯びた圧力容器などの鉄鋼は80年間ほど保管して、放射線量が下がったら処理作業に入ります。

リモコンによる廃炉作業をモニターで視察

それ以外は、高レベルの放射線から作業員を守るためにリモコンによる遠隔操作で解体作業を進めています。セキュリティーのために写真撮影は禁止されたので、この写真はEnkk社のカメラマンが撮影してくれたものです。慣れた手つきでリモコンを操る作業員さんが見ているモニターには、放射線を遮蔽するために水に浸された高線量の圧力容器の一部を小さな塊に切断する様子が映し出されていました。いくら慣れた作業であっても、リモコンでの作業では、巨大な圧力容器をすべて処理するには相当な時間がかかるのだろうと思いました。

圧力容器の解体作業

これ以外の汚染度の低い部品などは、化学薬品やサンドブラストなどで除染すると、98%は普通の「廃棄物経済(循環)」に戻すことができるということでした。でも、いくら除染されたとはいえ、原発に使われていた金属がリサイクルされて普通の廃棄物循環の輪に戻ってくるのはあまり気持ちのいいものではないと感じました。今回のプレゼン資料には、「我々は廃炉できる!」と力強い文字が躍っていましたが、経営陣は(法律で決まっている)2022年末までには残りの2基を廃炉にする前提で経営戦略を立てています。風力発電をはじめ再生可能エネルギーの割合を拡大して送電網を拡充するなど、市場の競争構造の変化に対応した経営を実現することを目指しているという説明が印象的でした。

 

 

独バーテン・ビュルテンブルグ州首相クレッチュマン氏らとの会談

菅元首相とクレッチュマンWB州首相

クレッチュマンBW州首相と官邸で会談

3月20日には、バーデン・ビュルテンベルク(BW)州のクレッチュマン首相を代表理事の橘と菅顧問が州首相官邸に訪問しました。忙しい州首相との会談は、EU政策・国際担当部長ヴァーナー・シェンピ氏らも一緒に朝食ミーティングという形で行われました。クレッチュマン氏は緑の党創設期からの幹部のひとりで、現在は全国16州の首相会議の議長(連邦参議院議長)も務めています。クレッチュマン氏は、昨年の5月に連邦参院議長として初めて日本を訪れました。

クレッチュマンBW州首相

BW州は、50年近く保守党のキリスト教民主同盟(SPD)の牙城でした。それが2011年の福島原発事故の直後に行われた州議会選挙で、1980年代から「脱原発」を訴えてきた緑の党に対する支持が急騰。25%近い得票率を得た緑の党は社民党(SPD)との連立政権を樹立して、クレッチュマンさんが緑の党としては初めての州首相に就任。それ以来、手堅い政権運営を続けています。その成果により、州都のシュトットガルト市長も緑の党のフリッツ・クーン氏が務めています。

ベンツの本社があるシュトットガルト

BW州は、ベンツやポルシェなどの自動車関連企業が本拠地を構え、機械や電子機器を輸出するドイツ経済のけん引役でもあります。BW州やバイエルン州などドイツ南部地域は、自動車産業など経済活動が盛んで電力需要も大きくこれまでは電力の50%を原発に頼ってきた地域ですが、2022年末までの原発全面停止に向けて大胆な「エネルギー転換(Energie Wende)」を進めています。クレッチュマン氏は、脱原発が成り立つための3つの柱は「エネルギーの安定供給、コストの認識、環境への配慮」だといいます。ドイツではエネルギー集約型の企業は高い電力を買う義務を免除されているそうです。

意見交換する橘と菅顧問

そして、今後は特に可能性の大きい風力発電を伸ばしていきたい。その場合の課題は、風の強い北ドイツで発電した電力を南ドイツに送りたいが南北間の送電網の整備計画が進んでいないことだと教えてくれました。また、風力発電のさらなる導入を求める市民や環境保護団体の声もあるけれど、送電線が通るだけの地域では住民の反対も強いそうです。印象的だったのは、再生可能エネルギー事業の特徴として、これまでのように電力会社や大口の投資家ではなく国民運動として市民による小額の投資組合の設立が進んでいるという話でした。総発電量の50%以上を投資組合を含む個人がまかなっている(農家がそのうちの11%)という事実は、「エネルギーの民主化」という意味でもすごい実績だと思いました。

 

菅元首相とウンターシュテラーBW州環境大臣

ウンターシュテラーBW州環境大臣と会談

その後、BW州環境省に移動してフランツ・ウンターシュテラーBW州環境大臣と会談しました。EU・国際関係担当のリュックさんや、アジア担当ヘルトマンさんも同席してくれました。環境大臣によれば、BW州では環境省がエネルギー政策も管轄するとのことでした。現状では、すでに再生可能エネルギーで総発電量の約23%をカバーしているそうです。晴天の昼間には、太陽発電で3500MWを得られて、これは需要の30~40%をカバーできる量だそうです。

環境大臣の話を聞く橘代表理事

州内には畜産業などから出る糞尿などを活用したバイオガス発電の拠点も多いそうですが、これまでコストが高いという理由で広がっていない風力発電で将来的には10%をカバーする計画を立てているとのこと。つい先日は、州内最大の電力会社に売却した配電(配熱)網を州が買い戻すことを決定。北西部のマンハイムでは、50km圏内に電力や地域熱を供給しているそうです。また、地域のゴミなどの廃棄物処分場で燃やした際の熱や電力を利用できるように配慮しているとのことでした。

熱心に質問する菅顧問

BW州には、今では再生可能エネルギーの分野で著しく成長している企業が多くあり、その分野の製品を欧州はじめ世界中に輸出している。その結果、様々な雇用が生まれてきている。ドイツで最も重要な研究機関も当州に拠点を置いているんです、と環境大臣は熱く語りました。例えば、「太陽光・水力発電研究所」などがシュトゥットガルトにあり、BW州はドイツの再生可能エネルギー研究における最重要拠点になっているということです。

 

ウンターシュテラー環境大臣らと

ドイツでは、2000年に「再生可能エネルギー法」による固定価格買い取り制度(FIT)を導入して以来、国を挙げて取り組んできた再生可能エネルギー産業の発展によって、約40万人もの雇用を創出しています。そして、自然エネルギーが総発電量に占める割合は、2013年の段階ですでに25%近くに達しています。ドイツに比べて気温も高く日照時間も長い日本。海岸線も長いので、太陽光発電にも風力発電にも適しているといわれています。ドイツでは、自然エネルギーによる発電が原発による発電量を大きく超えています。世界で一番の地震大国日本が、リスクの高い原発に依存するのを止めて、自然エネルギーに取り組まない理由はないのではないでしょうか?

 

ドイツ連邦議会「環境・自然保護・原子力安全委員会」の公聴会で報告

環境・自然保護・原子力安全委員会で報告

3月19日(水)は、菅顧問がドイツ連邦議会に招聘されて「環境・自然保護・原子力安全委員会」の「チェルノブイリ/福島」をテーマとする公開ヒアリング(公聴会)に出席しました。もう一人の報告者は、チェルノブイリ原発事故の専門家で元グリーンクロス・ロシアのウラジミール・クズネツォフさんです。会場は議事堂内のマリエ・エリザベート・リューダースハウス 3.101 会議室。報告は各自30分の持ち時間で、その後に質疑応答。最後にヘーン委員長による全体総括のコメントで締めました。この公聴会には、「キリスト教民主同盟(CDU)」や「社会民主党(SDP)」、左翼党、緑の党などすべての政党から多数の議員をはじめ環境・自然保護・原子力安全省の事務次官や官僚なども参加。2Fの傍聴席には緑の党や環境NGOのメンバー、若い学生たちなどが多く参加し、菅顧問の報告後の質疑応答では20件近くの熱心な質問や感想が寄せられました。

菅元首相 クズネツフォ氏

元グリーンクロスのクズネツフォ氏

【報告1: チェルノブイリ原発事故の被害とその後】最初に「チェルノブイリ原発事故」について、元グリーンクロス・ロシアの核と放射能に関する安全プログラムディレクターでアルハンゲリスク州立大学教授のクズネツォフ氏から報告がありました。クズネツォフ氏は、チェルノブイリ原発の3号炉でチーフエンジニアとして勤務し、チェルノブイリ原発事故後には事故後の精算人として、またソビエト原子力エネルギーアカデミーのメンバーとして働きました。

菅元首相 環境委員会

環境・自然保護・原子力安全委員会

【ロシアの原発事情】クズネツォフ氏は、ロシアでは原発における放射線管理や核廃棄物の保管など安全面で最新の基準に合わない問題があることや、現在でも原発の脆弱性が続いていることを報告しました。具体的には、チェルノブイリ事故の前の1977年に廃炉が決まっていた原発が資金不足で廃炉処理が進まず、今も燃料が取り出せず危険な状態にあること。現在、11基も(旧ソ連時代に事故を起こしたものと同じ)古い型の原発が稼働していること。また、原発事故で放射能に汚染されている森林で山火事が起きて、その放射性物質が大気中に飛散して新たな汚染が生じていることなどを報告しました。そして、ドイツの専門家からロシア政府に対して再度の原発事故が起きて「チェルノブイリの二の舞」にならないよう古い原発を廃炉にするようプレッシャーをかけて欲しいと語りました。

菅元首相 環境委員会

福島原発事故について報告する菅顧問

【報告2:福島原発事故と再生可能エネルギーの可能性について福島原発事故とその後の状況について、危機対応に当たった当時の首相として菅顧問が報告しました。菅顧問は、東京電力福島第一原発では3つの原子炉で次々と水素爆発があったが、それでもあの規模の被害で収まったのは自衛隊・消防・警察や原子炉で作業にあたった東電や下請会社の職員など関係者の決死の努力があったからだと報告。それに加えて、4号炉の核燃料プールが「幸運な偶然」によって冷却水で満たされて、メルトダウン(再臨界)が起きずに済んだから「首都圏を含む250キロ圏内の5000万人が避難」する大惨事にならずに済んだことを伝えました。それでも、まだ14万人が避難生活を強いられていること。広域の除染や被災者への賠償、廃炉や使用済み核燃料の最終処分問題などを考えたら、原発が決して安いエネルギーではないこと。その後に再生可能エネルギーの「固定買い取り制度(FIT)」が成立したことによって、太陽光発電などが急速に拡大していることなどを報告しました。

 

驚愕の事実にショックを受けるSPD議員

【「原子力ムラ」への質問も】公聴会の参加者の福島原発事故に対する関心は高く、質疑応答で20人もの各党議員から多くの質問が出されました。特に4号炉の燃料プールでメルトダウンが起きた場合、250キロ圏内の5000万人が避難する大惨事になっていた可能性があったことに対しては、SPDのニッセン議員から「驚愕の事実にショックを受けた。そんなに恐ろしいことになる可能性があったなんて知らなかった」やはり原発は絶対に廃止にするべきだという感想が語られました。

司会を務めるヘーン委員長

他の女性議員からは被災地の子供たちを含む被災者の放射線被ばくによる健康被害の実情。農地や海洋の放射能汚染と食料の安全性、廃炉作業に取り組む原発作業員の安全管理の問題について。また原子力ムラの影響力、現在原発が全て止まっていても電力が供給できている理由、再生可能エネルギー推進の主体について。政党の枠を超えた脱原発グループはあるのかなどの幅広い質問が次々と出されました。

菅元首相 ジルビアさん

質問する緑の党連邦議員たち

【報告の成果】この公聴会への参加をオーガナイズしてくれたジルビアさんによると、(ドイツでは福島原発事故を受けて、政治的には2022年末までにすべての原発の稼働を全廃することが決まっているが)「今日の午前中の環境委員会で、福島原発事故の後では初めてCDUの議員から公式に「経済的なことを考えたら原発の稼働期間をもっと延長するべきだ」という発言があった」「そのタイミングで、再稼働を狙っている保守系の議員たちに菅さんの話しを聞いてもらうことができたことの意味は大きい」とのことでした。

すべての政党から議員が参加した

与党のメルケル首相は、2011年の(福島原発事故の直後の地方選挙で)ドイツ緑の党が躍進(BW州で初のクレッチュマン州首相が誕生)したことを受けて、政治的な危機感から脱原発に舵を切りました。そのドイツでさえ、改めて「原発の2022年末以降の再稼働」の圧力が高まっていることに驚きました。同時に、まだ日本人にも十分に知られていない、原発事故が起きた場合の巨大なリスクを知ってもらうために「福島原発事故の知られざる事実」を国内外に広く伝えて行くことの重要性を改めて感じました。

ドイツ連邦議会議事堂

ドイツ連邦議会「環境・自然保護・原子力安全委員会」の公式HPに、ビデオ中継された公開ヒアリングにおける菅顧問の報告映像がアーカイブされています(※59分35秒に、司会で環境委員長のヘーン議員が公聴会の趣旨や報告者を開始。1時間2分20秒頃から菅顧問の報告がスタートします(ドイツ語の同時通訳音声あり))。

Vulnerabilities in nuclear power plants(原子力発電所の脆弱性)

ドイツ緑の党連邦議員団への講演と共同記者会見

菅元首相とドイツ緑の党幹部との共同記者会見

菅顧問とドイツ緑の党幹部の共同記者会見

3月18日(火)の14時から、菅顧問がドイツ緑の党連邦議員団やメンバーたちに向けて講演しました。テーマは「福島原発事故のその後と再生可能エネルギーの可能性について」。この後に、午前中に会談した緑の党幹部たちとの共同記者会見に臨みました。オズデミル党首による歓迎の言葉に続いて、幹事長のホフライターさんがドイツの自然エネルギーと原発事情を説明。その後に菅顧問の講演と続きました。それを受けて、福島原発の視察をしたばかりのジルビアさんがコメントしました。

菅元首相の記者会見

ドイツ緑の党の議員やメンバーが質問

その後に、参加者からの質疑に対応しました。参加者は、緑の党の連邦議員団の他にも、会員でお腹の大きいお母さんや若い女性の地方議員など。支持団体のひとつであるグリーンピース・ドイツの事務局長なども参加して、緑の党らしい多彩な顔ぶれでした。講演の後には議員を筆頭に参加者から、たくさんの質問が出て終了時間を大幅に超過してしまいました(写真はドイツ緑の党HPより)。

福島の状況を説明するジルビアさん

【大物議員も参加した講演会】冒頭に党首のオズデミル氏が、今回は緑の党の友人の仲介で菅元総理を迎えられたことを紹介してくれました。続いて菅顧問による講演。「幸運な偶然」で避けられたが、4号炉の燃料プールでメルトダウンが起きた場合は250キロ圏内の5000万人が避難するような大惨事になる可能性があったことなどを報告しました。日本でもあまり知られていない事実を聞いた参加者からは、大きな反響がありました。

脱原発の父!トリティーン元環境大臣

参加した議員の中には、2000年に緑の党が社民党との連立政権(1998~2005)の際に脱原発政策を決めた当時の環境・原子力担当大臣ユルゲン・トリティーン議員(脱原発の父!)や「環境・自然保護・原子力安全委員長」のベアベル・ヘーン議員、安全保障担当のフリッチョフ・シュミット議員などベテランを含む多数の議員や会員が参加しました。

ベアベル・ヘーン議員と意見交換

【環境・自然保護・原子力安全委員長と会談】記者会見の後に、ドイツ連邦議会議員団副代表で「環境・自然保護・原子力安全委員長」ベアベル・ヘーンさんの事務所を訪問。代表理事の橘と菅顧問が意見交換しました。ヘーン氏は、連邦議会議員になる前の10年間、ノルトライン・ウェスト・ファーレン(NRW)州の「環境・自然保護・農業・消費者保護大臣」を務めました。

菅元首相とヘーン委員長

菅顧問とヘーン委員長

会談では、翌日の環境委員会に向けて、チェルノブイリ事故と放射能汚染の話など放射能汚染の基準値などについて意見交換しました。ヘーンさんからは、最近でも(28年前のチェルノブイリ原発事故の影響の)セシウムが森の猪肉やキノコなどに見つかること。森がたくさんあるバイエルン州では、狩猟が盛んなため政治的な判断で食べてもいい(放射線量の)基準値を上げたこと。ドイツでも、地域自治体や原子力産業からは、経済性を理由に「原発の稼働期間の延長を求める声」が出ていることなども紹介されました。

 

ヘーン議員の事務所を訪問

【公聴会に参加するまでの経緯】明日は、ドイツ連邦議会の「環境・自然保護・原子力安全委員会」の公聴会で菅顧問が報告します。その経緯は次の通りです。ドイツ緑の党の原子力政策責任者であるジルビアさんが、昨年12月に3度目の来日で「東京電力福島第一原発サイト」の視察を初めて果たしました。その際に、菅顧問とジルビアさんが東京で会談しました。そして、菅顧問が3月にドイツを訪問する予定があることを知ったジルビアさんが、環境・原子力安全委員会の委員長を務めることになったベアベル・ヘーン議員(連邦議員団副代表)に相談。福島原発事故から3年を迎えるタイミングで、その「隠された事実」と28年目を迎えてもなお危機と被害が続いているチェルノブイリ原発の現状を、ロシアの専門家からも合わせて聞くことが決まりました。

 

 

ドイツ緑の党党首シェム・オズデミル氏らとの会談

 

菅元首相とドイツ緑の党幹部たち

ドイツ緑の党オズデミル党首らと

3月18日(火)には、ベルリンの連邦議会議事堂の会議室でドイツ緑の党共同代表シェム・オズデミル氏ら幹部と、代表理事の橘と菅顧問が会談しました。同席したのは、ドイツ緑の党連邦議会議員団の共同代表で幹事長のトニー・ホフライター氏と副代表のオリバー・クリシャー氏。「エネルギー・気候と環境」ワーキンググループ長です。ふたりとも、今年の総選挙後に新たなリーダーに選ばれました。それに、今回のベルリンでの緑の党関連の窓口になってくれた原子力政策スポークスパーソンのジルビア・コッティング・ウールさん。福島原発事故の後、毎年連続で4回も福島を訪問しています。昨年の12月に来日した際には、ドイツの国会議員として初めて、東京電力福島第一原発のサイトを視察しました。

質問をする橘と菅顧問

【ドイツ緑の党の歴史】ドイツ緑の党幹部に対して橘や菅顧問から「緑の党の歴史と支持層」などについて質問しました。また日本では、電力労組が脱原発派の議員を支援しないことから、ドイツ緑の党と労働組合との関係などについても質問しました。党首のオズデミル氏から、ドイツ緑の党は、1970年代の脱原発運動から始まり、地方議会、連邦議会へと議席を得て1998年には社民党(SPD)との連立政権(1998~2005)を樹立。2000年には2022年末までの原発全廃を決めた改正原子力法を通した経緯など「緑の党の歴史」について説明がありました。支持者層については、労働団体のような大きな組織ではなく、環境や人権に関心のある市民や高学歴のインテリ層など。また、健康で安全な食品や環境などを重視している女性が多いこともジルビアさんから紹介されました。

 

executives of German Greens

ドイツ緑の党の幹部たち

【ドイツでも原発稼働期間の延長が?】その後は、互に質疑応答。菅顧問から「福島原発事故が起きた日本では、6~7割の有権者が原発に反対なのに、それが選挙で議席として反映されていないこと(選挙に勝てずに脱原発政策を実現できないこと)がジレンマ」であることが伝えられました。ホフライター氏からは、「ドイツでも、政治的には2022年末までに全ての原発停止が決まっているが、保守的な国民(原子力産業)の間では、稼働期間の延長を求める声も浮上しているから、これからが廃炉になるかどうかの正念場である」ことが伝えられました。ドイツ側からは、日本の緑の党との関係についての質問も。菅顧問は、日本の緑の党は国会に議席がないために、公式の協議の場はまだ設置されていないと答えました。

 

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